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ぴかいちば
ぴかいちば
千葉のきらりと光る
社長へのインタビューをご紹介。
社長の熱い思いを語っていただきます。

「エビの陸上養殖」を通して
自給率の改善と地方創生にチャレンジ
日本初
「農地を活用した
エビの陸上養殖」を行っている
会社
 株式会社Seaside Consultingは、鋸南町で「耕作放棄地」を使ったバナメイエビの陸上養殖としてはで日本初の取り組みを私と妻の彩の二人の代表取締役で運営している会社です。
 海外で行われているエビの養殖場の多くはマングローブ林を開墾したかけ流し式の素掘り池で、水質改善剤や抗菌剤、餌の残渣や糞などが混ざった汚水を施設外に垂れ流す環境で行われている事が多く、またその養殖場が水中の汚泥が除去できなくなり、利用が限界になると別の水槽を作るために次のマングローブ林を開墾し、それまでの水槽は埋め立ててしまうようです。環境汚染をしながら養殖されているのを目の当たりにした私は、環境負荷をかけずに安心・安全で新鮮なエビを届けられる「閉鎖式循環型陸上養殖システム(RAS: Recirculating Aquaculture System)」に取り組む事にしました。そこで、年々増えつつある耕作放棄地を活用して養殖を行う事を考案しました。養殖を行う幅5m長さ32mの水槽は、50cmの穴を掘り、枡上に配置した護岸工事用のウォールにその土を充当し、側壁とした上で、遮水シートで被う太陽工業社の技術を活用しました。この工事は、用地内にある土で創られたものなので、農業用地として、元の状態に戻せるようにしています。また、日本初の技術であるファインバブル発生装置を使って、海水の浄化システムと併せて循環させる事で環境負荷をかけないシステムを構築して安心・安全なエビの養殖をしています。
 日本の全食糧自給率は38%といわれ、魚介類でいえば52%、千葉は伊勢海老の漁獲高は全国で1、2を争うといわれていますが、自給率でいうと伊勢海老を含むすべてのエビで4%(重量ベース)しかありません。更に農地に目を向けると「耕作放棄地」がどんどん増えていく一方で、その農地で他の事をやろうとしても「農地法」という大きな壁が立ちはだかっている事で、効率的な活用が進んでいません。色々な先輩達に「何故農地で養殖をやってはいけないのですか」と質問すると「それは昔から決まっているから」と返ってきます。「それは誰が決めたのですか」と返すと「当時の農林水産大臣でしょう」、「では、何故そう決めたのですか」と更に返すと「決まっているのだから仕方がない」と答えに窮します。弊社は他業界からこの事業に参入しましたが、どの仕事も業界の中にどっぷり浸かっていると、意外に新しい事は思いつきません。私が耕作放棄地を活用する事を考案したのも、この「業界」にいなかったからだとも言えます。
 耕作放棄地が地方創生にとって、足枷となっている問題は「官」に頼るだけでは変わることはないでしょう。でも私は「誰が悪い」と批判するのは大嫌いなので、「耕作放棄地」を使ってエビの陸上養殖が可能になるという事を「私が作って見せる」と行動を起こしました。しかもそれが採算ベースに乗って多くの事業者が養殖ビジネスに参入する魅力的な産業にしていくために取り組んでいます。
 「農地法」では一度農地を転用してしまうと、事実上、再び農地に戻す事が困難になるため、「農地転用」には高いハードルの許可を必要としています。これには、農業振興法も絡むので、町役場だけで判断できず、県に対する申請手続きとなり、判断が下るまでに多くの時間がかかります。農林水産省の判断にまで話が及びました。結果として「将来の恒久転用を行うこと前提とした一時転用」の措置となりました。これが、農地を活用したエビ陸上養殖の最初のケース(鋸南町調べ)となった訳です。しかし、2019年(令和元年)9月に千葉県を襲った台風15号での被害の対応に追われている中、頑張っていただいたと思います。更にこの「一時転用」の許可(2020年10月)が下りてすぐ、「新型コロナウイルス」によるパンデミックが起こり、販路の確保などゼロベースで構築する作業等に追われ、多難な船出となりました。
2021年8月に、ようやく実際の商業ベース養殖を始める事ができるところまでたどり着き、養殖した「バナメイエビ」は「がってん寿司」さんをはじめ、高級飲食店などとお取引をさせていただけるまでになりました。
株式会社Seaside Consulting
耕作放棄地を活用した養殖場
ハウスの中に作られたエビ養殖の水槽

保険会社の営業マンが
「エビの陸上養殖」に取り組む
 私は広島県府中市の出身で、父は製造業を経営していました。「明郷小学校(現:明郷学園)」という小学校に入学し、2年生になった頃、水泳クラブが出来て、小児喘息だった私は、それを克服するため、親から無理やり水泳を始めさせられました。私が育った広島は「広島東洋カープ」を有する県なので、子供たちは「カープ」という名前に人一倍愛着と憧れがありました。小学校に「明郷カープ」という野球チームが出来た事で、一緒に水泳をやっていた友達が水泳を辞めて「明郷カープ」に入るのを見て、私も「明郷カープ」に入りたいと父に嘆願しましたが、「ダメだ、一回始めた事をやめるのは男じゃない」と言われて許してもらえませんでした。
 中学までは地元で過ごし、高校は京都の進学校「洛南高校」に進学しました。この高校を選んだのは、地元には「競泳と学業の両立」ができる学校がほとんど無かったからでした。また、幸いな事に母が京都出身だったので、「京都なら行ってもいい」と許可ももらえました。「洛南高校」は難関校だったので、必死に勉強して何とか無事合格する事が出来ました。
 大学は「同志社大学」へと進学し、競泳も続けていました。そのおかげで、父の許しを得る事が出来ずに仕方なく続けた水泳も、高校では100mの自由形で当時の京都高校記録を樹立する事が出来、「インターハイ」にも出場、大学でも「インターカレッジ」に2回出場、更に国体にも高校から大学までで4~5回出場する事ができました。
 競泳にしろ、学業にしろ、私より才能がある人は沢山いたと思いますが、私は「粘り強さ」というたった1つの強みで、自分の活躍するステージを挙げて来ることができました。上述した水泳を辞めて野球を始めた大半の友人がいたように、私は努力したというより、続けていたら、いつの間にか上位に位置していた、という感覚を強く持っています。自分の人生で「負け」という烙印を残すのは「汚点」だと思う負けず嫌いさも相まって、今では、私の強みとなっています。
 大学を卒業して「安田火災(現:損保ジャパン)」に入社して12年間を過ごし、34歳のとき「プルデンシャル生命」へ転職しましたが、いずれの企業でも良い成績を達成する事が出来、評価をいただく事が出来ました。
 「プルデンシャル生命」に入社して2年もすると、クライアントとのスケジュール調整をすれば自由に使える時間が作れるようになり、当時36歳になっていた私は、今までのビジネスマンとしての経歴がどのレベルまでたどり着いているのかを知るために「人生のピットイン」をすべきだと思うようになりました。
 当時は今のような考えをしていた訳でなく、競争相手と差をつけるため、売り込まずに自分の価値を上げる事を考え、大前研一さんが主宰していたオンライン制のビジネススクール「ビジネス・ブレークスルー大学(BBT)」に入学し2年間で無事MBAを取得する事ができました。BBTは掲示板のような「エアキャンパス」の中で、ひとつの課題に対して議論を繰り返す体験もしましたが、それによって自分の実力の無さを思い知らされました。
 その後「自然派の生き方」や「サステナブルな生き方」に興味を持つようになり、それに関する色々な勉強会に参加するようになりました。参加した勉強会でよく顔を合わせたのが今の妻で、当時彼女は大手の通信会社に勤務していました。顔見知りになって話しているうちに意気投合し、生涯のパートナーとしてやっていく事にしました。
 ビジネスマンとして22年やってきた45歳(2015年頃)でやっと「本当に自分がやりたい事」にたどり着き、まだ保険会社に所属したまま妻と「日本の優れた環境商材」を販売する「グローバルグリーンマーケティング(GGM)」という会社を起業し、51歳になって保険会社を正式に退職するまでは、妻が中心となって活動していました。
 GGMを創業して間もなく、中国の水産庁のような組織が「ファインバブル発生装置」を使って「バナメイエビ養殖」の環境改善や収穫量アップ、成長促進に一緒に取り組んでくれる人を探しているという話が舞い込み、応諾しました。実証実験まで進んだものの、期待された結果までに到達する事が出来ずに、成約には至りませんでした。
 しかし、その時に目の当たりにしたのが、養殖の現場で起きていた環境汚染の実態で、これを何とか日本で実現しようとGGMに株式のほとんどを持たせて設立したのが、この会社「株式会社Seaside Consulting」です。
株式会社Seaside Consulting
このトラックに積んだタンクで海水を養殖場に運んだ
養殖している「バナメイエビ」

「基本的第一原理」に基づき
新技術を実現する
 以前は人を雇っていた事もありましたが、今は私一人でやっていて、日々格闘していますが、そのおかげで様々なアイデアが浮かびます。私が自ら体験して来た事ですが、エビの養殖は設備が不十分だと運用でカバーするしかないため、体力的にも大変きつい状態になります。また人海戦術だと人件費もかかって、結果的に出来る物が不十分だったらジレンマを繰り返すだけになってしまいます。なのでSeaside Consultingを始める前も含めると、およそ8年間考えてきたものを形にして、成功のための要因として、設備で9割、運用は1割で済むような仕組みを考案しました。既に実用新案になったものが3つ、昨年末に一つ特許出願をしましたが、今年は4~5件の特許出願が出来ると思っています。
 養殖には管理指標があって、室温、水温、酸素濃度、水素イオンの濃度(PH)などが今どういう状態になっているか24時間モニタリングをしているので、現在は自宅から監視出来るようになり、常に養殖場にいなくてもよくなりました。自宅は鋸南町の竜島という所にありますが、朝起きてからずっとモニタリングをして、今現在の水槽の状態を監視しています。変化があれば夜中でも朝でも必要な対処をしに養殖場に行くだけになったので、ずっと養殖場にいなくても良くなったのは大きな改善です。
 また、今シーズンでいえば10月25日に輸入した幼エビを水槽に入れ、それからの成長情報は後からでも見る事が出来るようになっているので、データを振り返る事でどの指標が収穫量に寄与しているか、どこが課題なのかを調べる事が出来るようになっています。
 一般的には私達がやっている「第一次産業」と言われる仕事に限らず、それぞれの分野には「匠の世界」があって、その人がいなくなれば終わりです。でも実際には普遍的な物があるはずなので、「匠」に頼らない「数値管理」が出来るようにしています。また、今後は私が気になる数値やこれから取り組まなくてはいけない「数値」を拾って、「AI」を使って何万通りなのか何百万通りなのか、多くの選択肢の中から適切な解決策を検証できるようにしていきたいと思っています。
 よく「全然違う畑からこの養殖の仕事になったな」と言われますが、物事の「根っこ」はさして変わらないと思っています。経験という積み重ねた時間は信用になるし、知識にもなるので間違いがないものです。しかし、世界的な企業家「イーロン・マスク」が「既知の常識ではなく、基本的原理に基づいて考えることが重要だ。(I think it’s important to reason from first principles than by analogy.)」と言っているように、私は物事を「基本的原理」から眺める事が大切だと思っています。
 たとえば「ほけんの窓口」のようなビジネスは、私が保険の業界で働いていた頃には思いつきませんでした。業界の中にいると、意外とそういう事が思いつきにくいものだと思います。だから養殖の仕事は、自分が感じる不便さに蓋をしないように心がけています。
株式会社Seaside Consulting
養殖された鋸南町産のバナメイエビ
バナメイエビのにぎり寿司

父の教え
『一芸を極めれば
万芸に通ずる』
 今になって思えば、父は子供だった私に素晴らしい事を教えてくれていました。家具製造業を経営していた父は高度経済成長期に乗った「名うて」の営業マンで、出張ばかりでなかなか家に帰ってこないような人でした。ある時久々に家に帰ってきた父が、晩酌で酔っ払っている時に私を呼び止め「お金ってどうやって儲けるかしっとるか?」と聞きました。当時小学校の2~3年の子どもだった私が答えられるわけがありません。「しらん」と答えると、「人の役に立ってお金というのは結果的に入ってくるんど」「それを覚えておけ」と父。つまり「社会に貢献しないやつがお金を得る事は無い」という事です。また、ある時は「『一芸を極めれば万芸に通ずる』という言葉を知っとるか」と父、「しらん」と答えると、「お前、復唱せい」と父。その場で5回も復唱させられた事もありました。
 人口5万人(当時)の府中市から京都市の高校へ行くなど、私がこれまでステージを上げてきた全ての「成功」は結局父の言っている「一芸」なんです。水泳からも学んだし、難関校に無事入学出来た事も、会社員時代に結果を残せたことも全て父の言葉で学んだ事でした。だから「成功」するまでやり続けるから成功するので、養殖の事業でも私は必ず成功すると思っています。
 もう一つの会社「GGM」が目標に掲げているのは「環境を通じて、物言わぬ環境や未来の人たちに対して、どういうサステナブルな社会を残すかという仕組みづくり、枠組み作り」で、私は「GGM Way」と呼んでいます。
 「GGM」の目標を達成するためには私一人が頑張っても、しょせん「一馬力」でしかありません。それを何とか実現するためには、私がやっている「エビの養殖」に一人でも多くの人が取り組んでくれる事です。その輪が広がっていけば、自給率4%のエビが30%、更には50%と増えていってくれるでしょう。私からしてみれば、千葉県、特に房総半島南部は温暖な気候で、海も近く、土地も確保しやすい、こんな適地はありませんが、産業が無く困っているのが実態です。この「千葉県がエビの一大生産地」になってくれるのが夢です。現在県内の有力企業と私のコンサルティングでエビの養殖を始める話が進んでいます。それがきっかけになって多くの個人や企業が参入してくれれば、この夢もより現実的になってきます。
 「農地を活用したエビの養殖」は一つの象徴的なモデルなんです。国内生産が少なく、輸入依存の典型的な水産物であり、一方の耕作放棄地は地方創生を難しくしている点で象徴的であり、ソリューションを示すべき事業と考えています。しかも、エビ養殖は東南アジアで環境問題を引き起こしており、日本人は間接的にこの問題に加担しているともいえる。私の考える「環境配慮型の養殖」に大企業や中小企業、個人事業主や農家の方まで参入して全国に多くの養殖場が出来ていけば、輸入に頼らずに地元のサプライチェーンで賄えるようになります。エビの国内市場規模は約4,000億円ですが、約90%(3,600億円)を輸入に依存している。つまり、全額ではないにしろ、輸出国へお金が流れている訳で、これを国内事業者の売上とすることが理に適っており、地方創生だと思っています。東南アジアで生産させて、日本にエビを持ってくる大資本は売り上げが減るでしょうが、フードマイレージは無い方がいいし、日本の食糧安全保障を考えると、良いことしかありません。まずは千葉県が先陣をきって、この3,600億円を国内事業者に取り込むことに挑戦していきたいと考えています。
 「Seaside Consulting」のビジネスがある程度自分が立てた目標に行き着いたら、誰かに任せて、私は次のステージに進みたいと思っています。私のようにスタートアップをする人は、アイデアはあっても、それを実現していくためのお金がない事で苦労しています。しかし、それに投資してくれる人がなかなかいないのが現状で、私の次のステージでは、そんな経営者に投資する事で支援していきたいと思っています。そういう人達を支援すれば、その力は何百倍にもなります。結果的に社会が良くなってくれれば、まさに「GGM way」の通りとなります。
 次のステージに立つために、まずは60歳を目標に「Seaside Consulting」を上場企業に押し上げたいと思っています。
株式会社Seaside Consulting
養殖場には日本初の陸上養殖の視察客が訪れている
「第一回ちばガストロノミーアワード」の生産部門でトップ30位に選ばれた
株式会社Seaside Consulting
企業名 株式会社Seaside Consulting
事業
概要
耕作放棄地を利用したバナメイエビの養殖
コンサルティング事業
住所 〒299-2115 
千葉県安房郡鋸南町下佐久間2720
電話
番号
090-6839-8027
HP HP:
https://tsuku2.jp/seasidebianca

Facebook:
https://www.facebook.com/
p/Seaside-Consulting-100072001639139/
資本金 2,303万円
受賞歴 2020年:
経営革新計画の承認取得
2020年:
事業継続力計画強化計画(BCP)
認定制度承認取得
2021年:
第37回ビジネスプラン発表会
~あすのちばを支える
ビジネスチャレンジコンテスト準大賞
メディア紹介 2023年:
フジテレビの「ぽかぽか」
2022年:
テレビ朝日 サンデーLIVE!!
「松岡修造のみんながん晴れ」
フジテレビ「サスティな!」
FMラジオ「ロコラバ」
2023年:
フジテレビ「千葉の贈り物 まごころ配達人」
その他資格 2008年:
ビジネス・ブレークスルー大学院
MBA取得(平野雄晟)
(2024/3/8)


〈編集後記〉
 
 「ベンチャー」とは「アドベンチャー」を元に作られた和製英語だそうで、「既存のビジネスモデルを元に新しいサービス」を作りだす設立から間もない企業を指し、起業家の事は英語で「ベンチャラ―」と言うそうです。一方で「スタートアップ」とは、起業や新規事業の立ち上げの事を言いますが、特に「革新的なアイデア」で短期的に成長する企業の事を言うそうです。
 平野さんは、お話の中でも「スタートアップ」という言葉を使っていましたが、まさに高い志をもって「革新的なアイデア」で取り組んでいると感じました。社会では「エリート」ともいえる道を捨てて、「日本初のエビの陸上養殖」に取り組んでいる平野さんご夫妻。高い志を持って挑戦する平野さんの活躍に今後も注目していきたいと思います。
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