九十九里町 九十九里有料道路
アクセスを向上させた「九十九里有料道路」と「東金九十九里有料道路」
九十九里地区には東金市に千葉東金道路、大網白里市、茂原市に国道468号線(外環道)が通っているだけで、九十九里沿岸を通る自動車専用道路は通っていませんでした。そこで九十九里海岸の観光と地域開発のために、一宮町の「一宮」から九十九里町の「片貝」までを結ぶ「九十九里有料道路」が建設されました。
この有料道路は、九十九里海岸はサーフィンのメッカで海岸には多くのサーファーを見かけることから、通称「波乗り道路」と呼ばれています。全長17.2kmのこの道路は、1970年(昭和45年)に着工し、1972年(昭和47年)に開通しました。「九十九里道路」からは海岸や太平洋、更に九十九里海岸に沿った街並みなどの景色を望むことができ、九十九里浜を見ながらドライブできる道路になりました。
「九十九里有料道路」の始点「一宮」近くの休憩所「波乗りパーキング」の1階には、駐車場、トイレの他、お土産コーナーやカフェがあり、2階は九十九里を眺望できる「波乗りテラス」になっています。ここでは海を眺めながら食事をすることもでき、元旦には「初日の出スポット」にもなっています。また、「波乗りパーキング」の敷地内には、かつて九十九里海岸で盛んに行われ、九十九里の繁栄に貢献した「地曳網像」も置かれています。
一方、東金―九十九里間の交通混雑緩和や、地域の生活向上、並びに地域産業・経済の活性化を図ることを目的に、1998年(平成10年)東金市と大網白里市、九十九里町までを繋ぐ「東金九十九里有料道路」が建設され、「真亀ジャンクション」で「九十九里有料道路」と繋がり九十九里地域へのアクセスが更に良くなりました。
「東金九十九里有料道路」は自転車も通行可能な珍しい有料道路です。また、「真亀ジャンクション」近くの「今泉パーキングエリア」には、九十九里を舞台にした高村光太郎の詩集「智恵子抄」にちなんで建てられた光太郎とその妻智恵子の銅像が置かれています。
海水浴とサーフスポットで人気になる
イワシ漁の町として知られ、今では「海水浴場」更に「サーフスポット」として知られている「片貝海岸」は、1910年(明治43年)に「片貝海水浴場無料休憩所」が作られ、イワシ漁の町としてだけでなく「海水浴」でも知られるようになりました。「海水浴場」としての知名度を上げていった九十九里町には、「高村光太郎」「竹久夢二」「徳富蘆花」など多くの文人も訪れ、一般の観光客も次第に増えていきました。
1926年(昭和元年)「東金―片貝」間には、路面に引かれた「軌道」をガソリンで走る「九十九里軌道」が開通し、訪れる観光客の足としても使われるようになりました。「九十九里軌道」は1931年(昭和6年)には専用レールを走る「鉄道」となり、社名も「九十九里鉄道」に変更されました。
夏にはアクセスが向上した九十九里町を訪れる観光客の数も次第に増え、サーフィンや海釣りなどの観光客も多く訪れるようになって、その繁栄は1970年代まで続きました。
しかしマイカーの普及や道路網が整備で、首都圏から「日帰りで行ける場所」へと変わっていったため、民宿などの宿泊施設にとっては打撃になりました。
一方、車社会への移行に伴い鉄道の利用客は次第に減少し、「九十九里鉄道」は施設の近代化が思うように図れず、1961年(昭和36年)に鉄道は廃止され「バス専業」の会社へと変化しました。
現在九十九里町には「九十九里鉄道」の他にグループ会社の「小湊鉄道」や「フラワーバス」などが運航され、千葉駅や東京八重洲までの路線があることで、「九十九里町」は都心と九十九里を結ぶ「バス」のアクセスの拠点になっています。
堤防として機能する「九十九里有料道路」
2011年(平成23年)に発生した「東日本大震災」では、銚子市から一宮町にかけて津波による浸水被害が発生し、九十九里町の片貝漁港周辺は津波で漁協の建物や多くの民家が流されるなどの被害が発生しました。
そこで千葉県は九十九里海岸の津波対策事業として2016年(平成28年)から既存の「海岸堤防及保安林」の砂丘のかさ上げを行うと共に、「九十九里有料道路」に防波堤としての役割も持たせるため、九十九里町片貝から白子インターチェンジ間8.9kmを6m前後「かさ上げ」する工事が行われ、2017年(平成29年)12月に再び全面開通しました。
また完成したこの有料道路では、2023年(令和5年)2月には「第一回2023東金・九十九里波乗りハーフマラソン」が開催され、2025年(令和7年)にも第三回が開催される予定になっています。このマラソンの「ハーフマラソン」コースは、東金市のスポーツ施設「東金アリーナ」をスタートし、「小沼田インターチェンジ」から「東金九十九里有料道路」に入り、「真亀ジャンクション」を経由して「九十九里有料道路」を片貝方向に進み、「不動堂インターチェンジ」の先で折り返してスタート地点に戻ります。普段は人が通れない有料道路を走ることができ、道路上からは太平洋の景色を望める「希少な体験」ができると人気になっています。
「九十九里有料道路」と「東金九十九里有料道路」は、九十九里地域へのアクセス向上だけでなく、防災そして地域イベントの拠点としても活躍し、これからも九十九里地域の要のひとつとして機能し続けるでしょう。
(2025/1/10)