●Vol.57 【勝手に注目】インバウンド需要
インバウンド需要
残念ながら千葉のインバウンドは圏外
インバウンドという言葉は「到着する、入ってくる」という意味の言葉で、旅行業界では外国からの観光客を指し、インバウンド需要とは日本にやってきた外国人が日本国内で購入する商品やサービスを指しています。
コロナ禍前2019年(令和元年)の訪日外国人の出入国者数は、法務省 出入国管理統計表のデータによると30,635,885人で、そのうち入国者数は8,978,773人の成田空港(成田国際空港)が第1位、続いて2位が関西空港(関西国際空港)で8,378,039人、羽田空港(東京国際空港)が3位で4,288,078人となっています。
一方、インバウンドビジネスの総合メディア・サイト「訪日ラボ」の記事によると、訪日外国人が参考にする口コミサイト「TripAdvisor」の「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の観光スポット2020」のランキングでは30位の中に千葉県の観光スポットは残念ながらひとつもランキングされていませんでした。千葉県内の観光で圧倒的に人気なのがご承知の通り大型テーマパークで、他の観光地や施設は肩を並べる事は出来ません。
株式会社Fun Japan Communicationsの記事によると、2019年(令和元年)の千葉県の訪日外国人客数は11,131,338人で全国3位にランクされているにも関わらず、平均宿泊日数と消費金額は共に全国でも下位に位置しているという残念な結果でした。
日本のインバウンドは戦後から
1945年(昭和20年)の敗戦後日本の観光政策は外貨獲得目的に、訪日外国人の旅行者誘致に取り組みました。戦後の混乱の中、観光業は国内にはまだ期待できなかったものの、1948年(昭和23年)に外国人旅行者の斡旋が一部認められると、いわゆる「インバウンド」によって日本の観光が復活し始めました。
1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピック、更に1970年(昭和45年)の大阪万国博覧会と国際的なイベントにより外国人観光客の訪日は次第に増加し、1960年(昭和35年)から1970年(昭和45年)までの十年間で訪日外国人は4倍に増えていきました。1992年(平成4年)の訪日外国人旅行者数は326万人に達していたものの、1991年(平成3年)にバブル崩壊が始まって以降は、それまで日本人の海外への観光主体からインバウンド観光振興へと舵を切りました。
その後2000年(平成12年)に訪日外国人は476万人で2003年(平成15年)のSARSの流行や2009年(平成21年)のリーマンショックや新型インフルエンザの流行の影響を受けて減少した年を除けば、2010年(平成22年)には861万人とほぼ右肩上がりの傾向で、2011年(平成23年)の東日本大震災があった年を除いて高い伸びを示し、LCCの普及もあり2019年(令和元年)には3,188万人にまで増加しました。
日本への来日目的は観光だけでなく、特に中国人観光客が日本で大量に商品を購買していく事も話題になり、「爆買い」という言葉が2015年(平成27年)の「ユーキャン新語・流行語大賞」にも選ばれるほどでした。
外国人に人気のある京都伏見稲荷大社
日光東照宮の陽明門
SNSの発信で千葉のインバウンドを獲得
千葉県は成田空港が海外の玄関口になっているものの、一部のテーマパークを除き訪日外国人は県外へ向かってしまい、残念ながら県内の施設や観光地などへは向かってくれていません。また、大資本が計画している施設は2025年(令和7年)にオープン予定の「日本ゲートウェイ成田」という施設はビジネス、日本の魅力・文化を発信する施設で新たな訪日外国人の人気スポットとになる事が想像できますが、県内の地元企業は大資本を投下する事は難しく、今ある物を生かす道しか残されていません。
一方、訪日外国人の一部は日本のサブカルチャーやポップカルチャーとして世界に評価されているアニメやゲームなどの文化に触れる目的で日本を訪れています。オタク文化の聖地である秋葉原や中野ブロードウエイをはじめ、アニメの舞台になった先をまわる「聖地巡礼」の他、アニメのテーマパーク「ジブリ美術館」などが彼らの訪日目的になっています。
千葉県内にも映画やドラマなどのロケ地を観光客が巡る「ロケツーリズム」の需要はあり、アニメの「聖地巡礼」を目的に観光客が訪れています。各市町村もロケ地誘致活動を積極的に行っていますが、アニメの舞台になる場所として使ってもらえるように情報を発信し、使ってもらえば「聖地巡礼」でインバウンド需要も取り込めるチャンスがあるのではないでしょうか。
SNSの普及によって日本を訪れた外国人が発信したSNSで次の訪日外国人を呼ぶ連鎖も起こっています。外国人に人気の鋸山の「地獄覗き」もそのひとつといえるでしょう。また、特にアジアから訪れる訪日外国人は甘くて美味しい苺狩りが人気だとされています。他にも梨狩りなど、千葉の優秀なフルーツもインバウンドを呼び込める可能性があるといえます。
自治体も積極的にSNSを活用し発信するようになったものの、それに頼ることなく自ら今ある観光資源を「SNSで発信しながら磨いていく」事で、もっと地元に利益をもたらすインバウンド需要を取り込めるのではないでしょうか。
アジア系外国人に人気の苺狩り
旭市刑部展望台にあるアニメロケ地の記念碑
(2022/12/9)