私たちの経営理念の根幹にあるのは、近江商人の心得である「売り手よし・買い手よし・世間よし」の「三方よし」です。そして経営理念の「四方よし」の考え方もよく聞かれます。
　売り手である私たちは、主にアパートなどの収益物件を販売しています。入居者の需要のあるエリアで土地を仕入れ、入居者が住みやすい建物を企画設計し、安全確実に建築して引き渡す。いたって普通のことを言っていて、やるべきことやっているだけですが、実際にすべて実現している会社は、残念ながら世の中に多くはありません。利益を追求している企業では、品質を妥協したり、従業員に無理をさせたり。そんな姿は売り手よしとは言えません。
　私は「会社としてきちんとやるべきことをしましょう」と言い続け、従業員たちも「儲かればいい、契約が取れればいい」なんて言う社員はいません。ただひたすらやるべきことを徹底し続けています。
　一方で、買い手であるお客さまは、アパートを購入すると経営者になります。私たちは、お客さまが経営者になられたのであれば、同じく「三方よし」の心得を大切にしていただきたいと考えています。といっても、お客さまのほとんどが専業大家ではなく、会社員や医師、経営者など、アパート経営とは別の本業をお持ちです。アパート経営は入居者管理や建物管理など煩雑な業務が多く、ときには専門知識も求められます。そこで私たちがお客さまに代わって賃貸経営を担うべく、賃貸管理業務をすべて請け負っています。つまり、お客さまにとっての「三方よし」は私たちにとっての「三方よし」でもあるのです。そして二つの「三方よし」を合わせた「四方よし」のかたちを経営理念に据えました。

　創業当時は住宅建築やリフォームなど、どんな仕事でも請け負っていました。
　長柄町は山間部ということもあり、ときどき別荘需要もあったので、お客さまがご自身で建築できるミニ・ログハウスキットの販売も手がけました。といっても、実際にはお客さまだけで組み立てるとなると、とてもたいへんです。そこでお客さまが途中で行き詰ることも想定し「私たちも一緒に組み立てを手伝う『ハーフビルド』にしませんか」と提案するなど、常に新しい手法を模索していました。
　もともと新しい価値を創造する「ゼロイチ」で戦うのが好きで、営業努力で売るというよりは、アイデアを練り上げて持ち込む「企画屋」気質なところもあったのだと思います。
　当時はまだまだ売上が２億円規模だったので、とにかく私が企画して、営業もして、現場管理もして。とにかくなんでもこなす、という状況でした。
　それが創業３年目にアパートを建築する機会があり、それから徐々に「アパート建築事業」を本格化。今では私だけでなく、会社全体が「ものづくり」にこだわる企画屋です。
　この「ものづくり」へのこだわりについて、専門的なことを言わずにわかりやすい例が従業員の構成比です。
　まず、前述したとおりグループ全体で100名ほどの従業員が働いていますが、そのうち55名がアパート建築事業に携わっています。ここで建築したアパートの販売は不動産会社へ委託せず、すべて自社で直販していますが、その営業社員はわずかに４名だけです。
　つまり、ほとんどの社員が建築設計や施工管理など「ものづくり」にかかわる職種で構成されているのです。
　私たちは営業に力を入れる販売会社ではなく、あくまで「ものづくり」にこだわる企画屋であり、作り手であり続けることが重要だと考えています。

　「建築がしたい」という一心で会社を作って自ら先頭に立って成功された田脇社長。ご苦労されたからこそ、より強く「お客様を大切にする」精神が生まれ、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の精神から生まれた「四方よし」の精神を社内全体に浸透させていました。これからの田脇社長のご活躍に注目です。